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暮らしの中の仏事
- 第15回 リビング葬 2008.03.16
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日本人の葬儀といえば、長い間、仏式や神式など宗教を中心とする伝統的な形が受け継がれてきました。仕事関係、友人・知人、近隣に広くその死を知らせ、盛大に見送ることが故人に対する手向けとされてきました。地域社会とのつながりも緊密で、葬儀は町内会やご近所が協力するというのが習慣でした。こうした伝統的な葬儀は、全国的には今も多く見られますが、近年、首都圏を中心に葬送の方法(あり方)に新しい動きが見られるようになってきました。
少子高齢化や核家族化、社会状況や意識の変化に伴い、さまざまな形のお葬式が行われるようになりました。背景には近所付き合いや社会的なつながりが希薄になったり、宗教観や死生観の変化、また男性の場合などは、高齢化により会社などを退職したあと亡くなるまでの期間が長くなり、会社関係の会葬者が減っていくなどさまざまな要因が葬儀への意識の変化をもたらしていると考えられます。
その例として会葬者が減少していく中、家族だけで故人を見送る「家族葬」が近年話題でしたが最近では、「リビング葬」といわれる葬儀スタイルが注目を集めています。「リビング葬」は単に葬儀の規模を小さくしたものや費用面のみを考えたものと違い、従来あった葬儀本来の目的である家族と故人とのお別れの時間をゆったりとることを目的に自宅のような環境と設備を整えた新しいタイプの葬祭施設で行うものです。現在、多くの人が病院で亡くなった場合、住宅事情などで遺体を自宅に安置できず、病院から直接葬儀場に運ぶために家族だけの最後のお別れの時間が過ごすことができません。また通夜から葬儀では式の進行と接客に追われ、ゆっくりと故人とのお別れができなかった、というご遺族の声も多く聞かれます。
「リビング葬」が行える施設には、大型のリビングルーム・キッチン&ダイニングや和室や浴室を備え自宅のように利用できるほか葬儀スタッフは、基本的にはご遺族の要望が無い限り施設内に立ち入らない場合が多く、家族や故人とのかかわりの深い方々でお別れの時間を持つことができるのが大きな特徴です。また、15名程度で行われることが多いため、食事などが通常の葬儀のものと違いコース料理などこだわりを持ったメニューが用意されている場合もあります。葬儀内容を生前に予約する人が増えるなど葬儀のあり方に関する考え方やこだわりを持った人たちのニーズを捉えた葬儀スタイルのひとつと言えるようです。
協力/メモリアルアートの大野屋