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第3回 インタビュー・金田一秀穂 ―人間関係の潤滑油「ありがとう」の落とし穴― 2007.05.06
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■困った時の「ありがとう」使い勝手の良い多面的な言葉

 「ありがとう」という言葉は今や、挨拶変わりになっているんですよ。とっても軽くて、とっても意味が広い。

 例えば初対面の第一声。「初めまして」と言いますね。でも、その人と二回目に会った時の第一声はどうします? 目上の人に「こんにちは」、「こんばんは」とはなかなか言えないものです。そこで出てくるのが「先日はありがとうございました」といったお礼なんです。別れ際はどうします?「さようなら」とは言いにくいし「お疲れ様でした」も何だか失礼だし…そこで代わりに、「今日はどうもありがとうございました」と使うわけです。

■かしこい「ありがとう」の使用法あれこれ

 最近、「先取りの礼」というものが流行しています。コンビニのトイレでよっこらしょと腰を下ろすと「いつも綺麗にご利用いただきましてありがとうございます」という貼り紙が目に飛び込んでくる。喫茶店などに入ると、「禁煙にご協力いただきましてありがとうございます」なんて書いてある。僕が「お腹空いたね~」と言うと、生徒はすぐに「あぁざーっす!」(ありがとうございます)と返してくる。僕が実際にご馳走する前からお礼を言うんですよ(笑)。これが「先取りの礼」というものなんですね。つまり、先に礼を述べることで間接的に依頼しているんです。実に新しい、気持ちの良い頼み方だと思いますよ。「ご馳走してくださいよ」と頼まれても「嫌だ」と舌を出せば断れますが、「あぁざーっす!」と言われちゃあ、ウーンなんて腕組みしつつも奢るしかない(笑)。嫌味のない耳に心地よい頼み方で、僕はとても好きですね。でも、中にはありがとうって言われたくない人もいるんですよ。高速の料金所で働く中年の方は、若者にありがとうと言われると複雑な気持ちになるらしいですよ。「お前の為に働いてるんじゃないよ」って(笑)。若者もそんなつもりで言っているわけではないと思うのですが。

 一方お年寄りには、何度も何度もありがとうを重ねて言うのが良いですね。少し前までの日本では、「先日はありがとうございました」を、次に会った時もその次に会った時も、さらにその次に会った時も重ねて使うのが礼儀だったんですよ。外国にはない、当時の日本の文化ですね。

■腰が低く、感謝よりも罪の意識が強い日本人

 モンゴルとタイには「ありがとう」という言葉がないんです。だからと言って感謝の気持ちがないというわけでは決してありません。例えば、こんな話があります。

 日本人男性とタイ人女性が結婚して一緒に暮らしていました。タイ人の友人が突然泊まりに来たので、たいそうもてなしてあげたそうです。しかし翌日、その友人は何も言わずに帰ってしまったそうです。

 「ありがとう」を多用する日本文化では考えられないことですね。その代わり友人は、その夫婦が泊まりに来た時は熱烈に歓待してくれるんです。つまりタイでは、親切にするのはごく当たり前のことであり、それに対して礼を言う方がかえって冷たく他人行儀なものと思われたり、「言葉だけで済ませる気か」とマイナスなイメージを与えてしまうんです。究極的な人と人との助け合いを考えるなら言葉だけで済ませることは出来ないし、むしろそこに言葉はいらないんです。でもちょっとは言って欲しいですよね(笑)。こんな話もあります。あなたが図書館で本を借りようとしていました。

・その本は既に友人Aが借りていたが、Aは快くその本を譲ってくれた

・別の日、今度は友人Bがその本を先に借りていた。Bに貸してくれるように頼んだが貸してくれず、そこに先生が現れて、Bに貸すように命令し、Bは渋々譲ってくれた

・さらの別の日、あなたが図書館で本を借りていると、AとBがやって来てその本を譲って欲しいと頼んだ

 あなたはどっちに譲りますか?気持ち良く貸してくれたAか、それとも迷惑をかけてしまったBか…。アメリカ人などは前者と答える者が多く、日本人は後者と答えることが多いようです。ここに、日本人の償いの文化が強く表れていますね。より申し訳ない思いをさせてしまった方に、親切をしたくなるのです。

 「日本は親切にするのが難しい国ですね」と言った外国の方がいます。それは本来「ありがとう」と言うべきところで「すみません」と謝る場合が多いからです。「ありがとう」と「すみません」とでは使用法やニュアンスが少し違うんです。例えば電車で席を譲ってもらった時には咄嗟に「すみません」と言いますが、コンビニやスーパーの店員さんは「お買い上げくださってすみません」とは言いません(笑)。このように日本人の微妙な使い分けは外国の方には難しい。使い方を間違えると、「親切だと思ってしたことにひどく恐縮されてしまった」と相手を嫌な気持ちにさせかねません。それではせっかくの善行も無駄になってしまいます。感謝の気持ちを伝える時は、「ありがとう」という言葉がやはり一番素直に響くのです。

■感謝しているのなら一生懸命生きて幸せになること

 他のたくさんの言葉達も感謝の言葉になり得るんですよ。「恐縮です」、「痛み入ります」、「言葉もございません」など。思ったことをストレートにそのまま口に出すのも良いでしょう。「これ欲しかったんだぁ」、「嬉しい」など、素直でわかりやすい。気持ちを伝えるためには、やはりボキャブラリーは多い方が良いですね。

 ただし、人に与える印象は言葉が三割、見た目が七割なんですよ。つまり口でどんな良いことを言っていたとしても、態度が悪ければ意味がないんです。「ごめんなさい」と謝っていても椅子にふんぞり返ってふてぶてしい態度でいるならば、それは謝っていることにはならないでしょう。「ありがとう」にも同じことが言える。心がこもっていなければ意味がないし、本当に感謝しているのなら「ありがとう」の言葉だけでは済まない。深々とお辞儀をしたり、贈り物をしたり、その人自身の今後の生き方であったり…何らかの行動が伴うはずなんです。言葉と態度が伴ってこそ、心が伝わるんですよ。

金田一 秀穂

hideho kindaichi
1953年5月5日生まれ。東京都出身。1983年東京外国語大学大学院博士課程修了。日本の言語学者、評論家、杏林大学外国語学部教授。日本語学を専攻。著書に『新しい日本語の予習法』、『通勤電車でメキメキ上達! 大人の漢字力!』など多数。

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