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芸能人インタビュー

どんな世界の中にあっても、自分を偽ることなく、心の声に耳を澄ませて生きていく 2012.07.17
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どんな世界の中にあっても、自分を偽ることなく、

心の声に耳を澄ませて生きていく

 

艶っぽく印象深い演技で、観客だけでなく監督や演出家まで魅了する秋吉久美子さん。主演映画『「わたし」の人生~我が命のタンゴ~』では認知症の父と向き合う大学准教授・百合子を演じる。「学校の授業に『老後』って必要よね」と断言する秋吉さんに話を伺った。

 

■がんじがらめの世界だからこそ、あえて私らしく

 

 「あら、次の方がもう見えてるの?」
 コーヒーを置くと、彼女は立ち上がった。引き締まったしなやかな体、凛とした佇まい―親しげな笑顔をこちらに向け、ゆっくりとお辞儀をする。
 流れるような美しい所作だった。
 彼女の最新作について感想を述べると、「ねぇ、本心からそう言ってる?」と探るように身を乗り出す。そして、「嬉しい。頑張って良かった」と、ホッとしたように頬を緩ませた。
 秋吉さんは藤田敏八監督や大林宣彦監督を始めとする名匠たちのもと、多くの作品でその表現力を魅せつけてきた。胸がざわめくような演技で人々を惹き付ける一方、その奔放な発言や振る舞いも、たびたび世の中の注目を集めてきた。
 「デビュー当時はまぁ、とんがってましたから(笑)。周りの大人たちが望むような女の子ではなかった。記者会見に毛玉のついたセーターを着ていって、マスコミに散々叩かれたという思い出も(笑)。
 たまに、なんて道を選んでしまったんだろうと思うときがあります。芸能界に生きる者の宿命ですが、女優はあらゆる角度から見られ、時には裁かれる。場合によっては演技ができなくなる状況まで追い込まれることもあります。TPOはもちろん社会情勢や世論、時代の流れなど、つねに物事を立体的に観ながら行動しなければいけないんです。言葉ひとつで、大炎上する可能性もありますから」
 秋吉さんは両手を組み、目の前を見据えた。
 「がんじがらめの中で、いかに自由に、自然体で生きられるか」
 不自由な世界で、自分の個性を貫く。それは、ある種の挑戦のようにも思える。 
 「好き勝手にやってるようで、実は色々考えているんですよ」と、いたずらっぽく肩をすくめた。

 

■芸能界で生きていく上での

道しるべとなったコーデリア
 

 ―永遠に生きるかのように学べ。 明日死ぬかのように生きろ―秋吉さんの好きな言葉だ。
 それを実践するように、秋吉さんは53歳で早稲田大学大学院に入学した。
 湧き上がる知的探究心と共に、自分の人生に風穴を開けたいという想いもあったのかもしれない。
 女優と大学院生という二足の草鞋。芝居の稽古に全力を注ぎつつレポート制作に励み、大学院の仲間たちと議論を交わす―濃厚な二年間を走り抜け、秋吉さんはなんと学科の総代・首席で卒業した。
 「一番の収穫はこれ!」と、大学図書館のカードを得意げにかざす。「これで読み放題です」とニヤリ。
 「ハングル語の辞書を引いていて、ふと隣の中国語やギリシャ語の辞書に目移りしたり、郷土史に手を伸ばしたり(笑)。本を一冊にまとめるって、物凄いエネルギーなんですよ。それが何万冊も、一生かかっても読み切れないほどあって、その空間の中に自分が居る…途方もない事実を前に、私は図書館でひとり打ち震えるんです。知らないことがこんなにあると思うと、もう興奮して、ドーパミンが出ちゃいますね。頭にチップでも埋め込めば全部読めるのに…」
 実は秋吉さん、たいそうな読書家なのだ。本と共に育ったと言っても過言ではない。
 中でも、秋吉さんの人格に大きな影響を与えた本がある。子どもの頃に読んだシェイクスピアの『リア王』だ。
 「リア王の娘であるコーデリアに強く惹かれました。父リア王を心から愛しているのに、疎まれ、遠ざけられ…それでも父を思いやっている。自らを偽らず、取り繕わず、自分の中の真実に従って生きているんです。彼女の芯の強さに憧れたし、また、そうあるべきだと思っていました。『私はコーデリアなんだ』と思い込んでいた時期もあるんですよ」
 クスッと笑い、秋吉さんは顔を上げた。
 「生意気だと叩かれたり撮影現場で孤立したり、落ち込んだこともありました。でも、芯があるから挫けなかった。ぶれずにいられた。誰に何を言われても自分らしくいられたのは、私の中にコーデリアがいたからです」

 

■介護問題に直面した家族を、現役医師が等身大に描く

 

 そんな秋吉さんが、高齢者介護をテーマとした映画に主演する。メガホンをとったのは現役医師の和田秀樹さん。今の日本の介護問題を浮き彫りにしつつ、一つの家族の現実を等身大に描く。高齢者の臨床に携わってきた和田監督ならではのリアリティが胸に迫る。
 “大事なときに限って、どうしてあんたはいつもいないのよ!”
 ―母の葬儀で妹を怒鳴り付ける百合子。海外で仕事をする妹の実可子は、母の死に目に立ち会えなかったのだ。何かあると大変な思いをするのは、いつも長女の百合子だった。
 葬儀が終わり、次第に忙しい生活に戻りかけていた家族。そんなある日、父が痴漢行為で警察に保護された。父の異変を案じた百合子が病院へ連れて行くと、認知症を患っていたことが発覚する。心配ゆえに口煩くなる百合子を邪険に扱い、実可子に頼る父。自分を拒絶し、別人のようになっていく父を受け入れられない百合子。手に負えない父の言動や行動に対するストレスから、家族の関係は次第に荒んでいく…。
 「老後の身の振り方なんて誰も教えてくれなかった。学校の授業の必須科目にすべきですよ。物理的・精神的サポートの場が圧倒的に不足しているのが日本の介護の現状。和田監督はその問題提起と共に、一つの解決策を提示することで、希望を伝えたかったんだと思います。まさに私たちの世代が直面している問題なので、勇気付けられる方も多いのではないでしょうか。
 良好な関係を築いていた家族でさえ、誰かが病気になっただけでこんなにも揺らぐ。無意識のうちに被っていた『父』『娘』という皮が剥がれ、素になって罵り合い、憎み合い、でも最後には赦し合う。この『素になる』感覚がとてもリアルなんです。私自身も、亡くなった父に同じ瞬間を感じたことがあります」
 実はこの作品、リア王がベースとなっている。秋吉さんが演じた百合子は、まさにコーデリアだったのだ。「いつかコーデリアを演じたいと思っていたけれど、年齢的に諦めていたのに。まさかこんな形で巡ってくるなんてね」
 感慨深げに呟く。
 今後の目標を聞くと、少し考えてから、「ちゃんとした大人になりたい」とキッパリ。
 大真面目な表情が印象的だった。

 

 

 

女優/秋吉久美子
あきよし・くみこ  1954年静岡県出身。'74年に藤田敏八監督の『赤ちょうちん』『妹』『バージンブルース』に出演。ブルーリボン賞主演女優賞、日本アカデミー賞優秀主演女優賞等数多くの賞に輝く。代表作に『あにいもうと』『異人たちとの夏』『深い河』等。'09年に早稲田大学大学院公共経営研究科を修了。

 

 

 

●インフォメーション
『「わたし」の人生 ~我が命のタンゴ~』
子育てを終え、大学教授になるという長年の夢に向かって歩き始めた百合子。その矢先に、元大学名誉教授である父の認知症が発覚。病気の進行への不安と介護という逃れられない現実から衝突が増え、家族は次第に離ればなれに。ある日、父は家族に連れられリハビリの一環だというアルゼンチンタンゴの教室に参加するが…。実際のエピソードを基に描く希望と感動の物語。

 

 

■ 監督/和田秀樹 
■ 出演/秋吉久美子、橋爪功 他 
■  8月11日(土)、シネスイッチ銀座他にて全国順次ロードショー 


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