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芸能人インタビュー
- 良ければ俺の手柄、悪ければ監督の責任(笑)。そう思っていなければ喜劇に押し潰される 2016.02.16
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年齢を重ねると共に存在感が増し、今や日本映画界に欠かせない俳優となった橋爪功さん。今回、熟年離婚の危機を迎えた一家をユーモアたっぷりに描いた山田洋次監督の映画(3月12日公開)に出演。なんと『寅さんシリーズ』を受け継ぐような待望の喜劇です。
山田監督20年ぶりの喜劇。テーマは「熟年離婚」と「家族崩壊」
「感動を与えたいし、恐怖も感じてほしい。とことん軽蔑されるなんてのも最高ですよね。俳優なんだから、いろいろな役をやりたいですよ。まだまだ何でもできるぞという夢は持っていますから」
74歳となった今も一線で活躍する橋爪功さん。コミカルからシリアスまで演じ分ける橋爪さんが、亭主関白の一家の長を演じた新作映画が3月12日に公開されます。 「3年前に公開された『東京家族』(山田洋次監督)の撮影の合間に、出演者同士がよく喋っていたんですよ。そのとき蒼井優ちゃんの知人のエピソードを聞いた山田監督が『崩壊家族』っていう映画が撮れると仰ってね。そのときの出演者やスタッフが再集結し、制作が実現したのが今回の映画! 題名を聞いたときはさらにアングリでしたが…」 それが『家族はつらいよ』。26年間続いた国民的映画『男はつらいよ』を受け継ぐものでした。題名だけでなく内容も『寅さんシリーズ』と同じ喜劇ですが、橋爪さんは少しだけ顔をしかめます。
「本当に喜劇は難しいんですよ。笑いって一過性なので、いくらやっても手応えがない。でも今回は、あまり不安はなかったです。寅さんを48作も撮られ、〝普通の人々〟をあれほど生き生きとさせる手練れの山田監督がメガホンを取るんですから(笑)」 結婚50年を迎えようとする平田周造と富子は、長男夫婦と孫ふたりと共に東京郊外で暮らしています。喧嘩が絶えない長女夫婦、結婚を決めた次男。このどこにでもいそうな家族に大問題が勃発します。誕生日の富子が周造に欲しいとねだったのが「離婚」だったのです。長年連れ添った妻からの三行半に狼狽する周造、降って沸いた両親の離婚危機に戸惑う子どもたち。解決の糸口が見つからないなか、一家は家族会議を開くが…。平田家の大騒動をユーモアたっぷりに描いていますが、撮影現場は緊張感に包まれていたと言います。
「監督は観客を笑いに誘うアイデアをいくつもお持ち。そこからひとつを選び、映像を作る繊細な作業です。そして何よりも大切にされたのが〝間〟。だから、演じる側は緊張しっぱなしですよ。撮影後は『今日、俺大丈夫だったかな』と後悔してばかり。でも、ひと晩寝ると忘れるんですけどね。結局は監督にまかせとけばいいから。良ければ俺の手柄、悪ければ監督の責任(笑)。そうでも思っていなければ喜劇に押しつぶされてしまいますよ」 山田監督が本格的に喜劇を手掛けるのは『男はつらいよ』以来20年ぶり。重苦しい時代にこそ笑いが必要と考えたからです。
「確かに妙にきな臭いし、何だかギクシャクした雰囲気はあります。ただ、監督はこの作品で世の中を変えようなんて思っていらっしゃらない。こういう喜劇が受け入れられる時代なら決して曲がっていかない──そんな夢を持っていらっしゃるんじゃないかなぁ」 両親に熟年離婚の危機が訪れたとき、家族は一体どうなるか。ひとしきり笑った後、誰もが家族の在り方を考え直す作品に仕上がっています。
最後に橋爪家のことを聞くと、いつ〝家庭内テロ〟が起きるか分からないと笑います。 「『だからアナタは駄目なの』って、カミさんにいつも怒られていますから。原因? そりゃあ、まぁ僕の日頃の積み重ねですよ。叱られては謝り、また叱られるの繰り返し。でも、こんなことも夫婦生活の面白さなんでしょうね。面白いなんて言ったら、また怒られるんでしょうけど(笑)」
■プロフィール
俳優/橋爪功
1941年大阪府生まれ。文学座、劇団雲を経て、75年演劇集団円の設立に参加。『キッチン』では日本アカデミー賞優秀助演男優賞、『お日柄もよくご愁傷さま』で同主演男優賞を受賞。山田洋次監督作品では同主演男優賞受賞の『東京家族』、『小さいおうち』『母と暮せば』に出演。
■インフォメーション
家族はつらいよ
3月12日(土) 全国公開
■監督 山田洋次
■出演 橋爪功/吉行和子/西村雅彦/夏川結衣/中嶋朋子/林家正蔵/妻夫木聡/蒼井優 他