銀幕のスターとして数々の名作に出演した岸惠子さん。作家としても優れた作品を執筆し、昨年には自著『わりなき恋』を自ら脚色し一人芝居にするなど精力的に活動しています。今回は岸さんの体験などをユーモアを交えておくるスペシャルトークショーについてお話いただきました。

岸惠子のこれまでと、これからを伝える
スペシャルトークショー

　「私、二つのことが同時にできないんですよ。精魂込めて書いている小説が終わってからと思っていたので、今回のトークショーのチラシを見てびっくり。それで、さぁ準備をしなくてはと思って。今、映像で使う写真を探し出しているところです」 　日本映画の黄金期を築いた岸惠子さん。知的で気品ある演技、年齢を重ねても変わらぬ美しさ、しなやかな生き方など、多くの人が憧れる存在。現在も女優、作家として精力的に活動し、この日もまさに前日に新作『愛のかたち』と題した小説が完成したばかり。「やっと終わったけれど、次はこのトークショー。事務所は私の身体を気遣って、トークショーという形にしたのでしょうけど、準備の段階だけでこの有り様。これだってまだほんの一部です。本当に終わるのかしら（笑）」　 　テーブルいっぱいに並ぶ写真を前に話す岸さん。それらは、８月から始まる『岸惠子 スペシャルトークショー～夢のあとさき～』のために用意している写真の数々。岸さんの話し声も街の雑踏までも聞こえてくるようなものばかり。岸さんはその声ひとつ、音ひとつを丁寧に拾い上げようと奮闘中です。この舞台では、女優・作家として活躍しながら、同時に世界に目をむけてきた岸さんの眼差しや経験を秘蔵のフィルムなども交えて語ります。 　「もちろん、来ていただくお客様に楽しい時間を提供しなければいけません。単に私の歴史をつづるものにはしたくありません。年配の方が多くなるとは思いますが、年代問わず楽しんでいただけるよう、資料を整理してストーリーもきちっと仕上げていきます。私の夢のあとさきは、語るにはあまりに広くて遠いですから。そしてまだ構想段階ですが、私が翻訳した『パリのおばあさんの物語』やごく短い映画を交えながらストーリーを展開させていければ面白いかなと。それと私は衣裳をとても大事にしますので、観に来てくださる方が喜んでくださいますし、舞台の途中で衣装替えはしたいなぁって考えています」

 新しい試みも新鮮で楽しい！

お客様に素敵な時間を届けたい

　この年齢になってこんなに忙しくなるなんてね、と微笑む岸さん。華々しい人脈、女性として母として、いまは孫をもつおばあちゃんとして。世界中を飛び回り目にした喜びや哀しみ。話したいことはやまほどあるけれど、すべてはお客様に素敵な時間を過ごしていただくためと言葉にも熱が入ります。 　「まずは皆さんが聞いて楽しいものにしないと。それには資料や映像の編集、演出も大切。私にとっても新しい試みですから新鮮ですし楽しいです。幸も不幸も抱えながら今を一生懸命に生きることの大切さも伝えられたなら嬉しいですね。とにかく決めた以上は、もう絶対に最高のものにしたい！ それにはまずは私自身健康でないと。最近は疲れやすくなっていますしね。お世話になっているドクターからは〝いいですか、あなたの年齢でこんな過密なスケジュールの仕事をする人はいません。普通おばあちゃんと呼ばれるのですよ〟と言われて、〝普通である必要なんてないじゃない！ 私は女優として約束を果たすべき責任があるんです。先生何とかしてください〟って（笑）」 　トークショーに向けて少女のように目を輝かせて構想を語る岸さん。どんな舞台空間が生まれるのか期待が膨らみます。

■プロフィール

 女優・作家／岸惠子

横浜市出身。「おとうと」「細雪」など数々の名作に出演。「亡命記」で東南アジア映画祭最優秀女優主演賞受賞ほか受賞多数。作家としても「巴里の空はあかね雲」（文芸大賞エッセイ賞受賞）など多数執筆。『わりなき恋』では自ら脚色し、全国で一人芝居として上演。2011年フランス共和国政府より芸術文化勲章コマンドール受勲。

■インフォメーション

岸惠子スペシャルトークショー～夢のあとさき～

出演：岸惠子
日程：8/9（水）なかのZEROホール、8/26（土）川口総合文化センター リリア、9/14（木）相模女子大学グリーンホール、9/19（火）練馬文化センター、10/9（月祝）オリンパスホール八王子、10/25（水）新宿文化センター 他
料金：5,500円（全席指定・税込）
【問】サンライズプロモーション東京TEL.0570-00-3337