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潜空服職人 2008.09.07
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潜空服職人が50歳を超えて出会った大切なもの

黒木究

 魚たちが空気中で遊ぶことができるようにと、『潜水服』ならぬ『潜空服』を作っている黒木究さん。「いったん作り始めると仕事が手につかなくなる」。潜空服を作るときだけ、少年の頃に戻ります。

 とある半島の、南側の付け根にある『潜空服工房』。そこには日々、さまざまな魚たちが訪れます。サンマのジョナサン君、ウマズラハギのジョバンニ君、カサゴのアルフレッド君…。潜空服職人である黒木究さんは、彼らの寸法に合わせて図面を起こし、彼らのために素敵な潜空服を作ります。

 「これは『潜空服職人ものがたり』という、僕が作り上げた空想の世界です。けれど実際に潜空服を作る僕がいて、潜空服が存在している。それは自分にとって、とても意味のあることなんです」

 人間が海に潜るために着る潜水服に対し、魚が空気中で活動することを想定して作られた潜空服。作品としての潜空服は、精巧な作りながらもどこか温かみのある、味わい深いものです。

 「幼い頃、川の中から潜水服を着た人が、ゴボゴボと物凄い泡を出しながら上がってきたのを見ました。大きな金属製の頭や、ごわごわの服にびっくりし、その特別な質感が心に残ったんです。初めて作ったのは三年前ですが、作りたいなぁという気持ちは10年ぐらい前からありました。潜空服には出来る限りの防水加工を施していますが、本物の魚に入ってもらったことは一度もありません。よく、『何のために作っているのか』と聞かれます。少し哲学的な言い方になりますが、理由がどうこうより、『潜空服が存在している』ことそのものが、僕と魚たちにとって重要なんです」

 黒木さんの本職は看板作りですが、潜空服がきっかけでお声がかかり、現在は映画の美術監督を初体験中です。

 「もともと絵を描いたり工作することが好きだったんです。午前中に潜空服作りをして、午後に仕事をするのが理想的なんですけど、いったん作り始めると出来上がるまで仕事をする気になれないんですよ(笑)。どんな潜空服を作ろうか、思いを馳せているときが一番幸せです。子どもの頃、夏休みに工作の宿題が出ると食事すら忘れて熱中していましたが、それと同じ感覚です。作りかけた潜空服を枕元に置いて眠るぐらい、好きなんです。すべての作業工程にわくわくします」

 今は、画家のシャガールやクレーなどが描いた名画に登場する魚たちのために、潜空服を作り始めています。

 「50歳ぐらいから、自分の可能性をどんどん捨ててみたんですよ。そしたら、本当にやりたいことが残った。子どもの頃の夏休みに戻っていたんです」

 

黒木究  Kiwamu  Kuroki

宮崎県出身。東海大学海洋学部卒、海上自衛隊幹部候補生学校入校。78年退官ののち、南米ペルー旅行、民芸品、銀細工作りに勤しむ。帰国後、看板業、木版画の制作。2005年から潜空服の制作、2007年『潜空服職人ものがたり』を書く。

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