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人生の達人

ちひろ美術館・東京」副館長 2008.10.23
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 今回ご登場いただくのは、「ちひろ美術館・東京」の副館長を勤める松本由理子さんです。松本さんは三十年に渡り、画家・いわさきちひろさんの作品やその素晴らしさを人々に伝え続けてきました。チャーミングな笑顔と、思わず惹き付けられてしまう軽快な語り口が魅力の松本さん。ちひろさんとの出会いから美術館創設までの経緯、そしてその心に秘められたさまざまな想いを伺いました。

 

いわさきちひろとの出会い。二人を結び付けた強い絆

  淡く柔らかな色彩、真直ぐにこちらを見つめるつぶらな瞳、今にも動き出しそうな子ども…。画家・いわさきちひろさんの描く絵は、今もたくさんの人々に愛されています。

  『ちひろ美術館・東京』副館長の松本由理子さんが、ちひろさんに出会ったのは大学生のとき。彼女の長男であり、現在は安曇野ちひろ美術館の館長である松本猛さんに、「おふくろだよ」と紹介されたのが初対面です。

 「体も小柄で、物静かで控えめで、女学生のような清楚な雰囲気があって…。『わぁ、絵のイメージそのままの人だ』って思いました。当時、私はちひろさん(※以下敬称略)のことを全然知らなかったんです。『可愛らしい絵を描く人』って、それぐらい。弁護士やジャーナリストに憧れていたこともあって、どちらかと言うと彼女の夫の松本善明(元衆議院議員、弁護士)の方に興味がありました」

 ところが松本さんは、当時制作中の絵本『戦火のなかの子どもたち』の原画を見て、衝撃を受けます。ベトナム戦争を題材としたそれは彼女の作品にしては珍しく、ほとんど色のないモノクロに近い絵ばかり。そこには戦争によって、本来の伸びやかさや命を奪われた子どもたちが描かれていました。

 「当時、私がもっとも関心を寄せていたのがベトナム戦争でした。この少女のように可愛らしい人が、自分と同じことに関心を持ち、心を砕いている。そのことに強く惹き付けられたんです」

 一見正反対のような、活発で明るくエネルギッシュな松本さんと、物静かで控えめなちひろさん。揺らぐことのない強い芯を持つ二人が、繋がった瞬間でした。

 

全国から寄せられた切なる声…。たくさんの願いが詰まった美術館

 ちひろさんが若くして亡くなったことが、美術館創設のきっかけでした。

 「すでに結婚して松本家にいた私は、ちひろと所縁のあった人たちから彼女のさまざまな思い出話を聞いたり、作品や資料の整理をしたりしていました。そうやって彼女の人生を辿っていく中で、私自身がどんどん彼女の人生にのめり込んでいったんです」彼女の作品や想いを、より多くの人に伝えたい。その思いが次第に強くなっていきます。

 「決定的だったのは、ちひろの絵を愛してくれた人たちの切実な声です。自分にとってちひろの絵がどれだけ大切だったか、支えだったか。そういう手紙が本当にたくさん届けられたの」

 現在美術館の館長である黒柳徹子さんからも、心温まる手紙が届きました。たくさんの人々がちひろさんの絵を求めていることを知り、それが美術館作りの後押しとなりました。

 「『子どもは未来。私にはどんな子も、夢を持った可愛い子に見える』。成績が良いから、行儀が良いから愛するのではなく、ただそこにいてくれるだけで愛おしい。ちひろの絵は、忘れかけていたその気持ちを思い出させてくれるんです。ちひろは、子どものエッセンスしか描きません。髪の色も塗らないし、眉毛や顔の輪郭もほとんど描かない。時代を感じさせる描写もないから、何年経っても古くならないの。日本人や外国人、見る人によって髪に重ねる色は違うでしょう。六割で筆を止めて、残りの四割を見る人に委ねているから、自分なりのイメージを膨らませる自由があるんです」

 だからこそ今も広く愛されているのではないか、と松本さんは続けます。

 「ちひろは世界中の子どもたちの幸せを願っていました。でも、親が幸せでなければ子どもも幸せにはなれないんですよね。皆が皆、幸せになってほしい。戦争や貧困に苦しめられる人が、少しでも減ってほしい。その願いは私の願いでもありました。

 『ちひろ美術館』は、平和の大切さを伝えるひとつの場でもあったんです」

 

愛情表現は節約しない! 思いを言葉で伝えることの大切さ

 好奇心の塊だったと、松本さんはご自身の子ども時代を振り返ります。

 「あれ何? これ何? なぜ、どうして? が口癖でした(笑)。ある話題に対して皆で意見を言い合うような、会話の絶えない家庭で育ちました。その中では親も子も関係なくて、正しいことを主張した方が認められる家だったんです(笑)。相手を傷つけたりするようなこと以外なら、何でも言葉にすればいい。私は未だに子どもたちを抱き締めて『大好き~』って言っています。四人姉弟の一番上は31歳、末っ子でも22歳になる大きな子どもたちですけど(笑)。声を掛けたり触れ合ったりするのは、愛情を伝える上で大事なコミュニケーションですよね」

 皆がそれを実行できれば、世の中ずっと素直に回ると思うんだけどな、と松本さんは笑います。

 「子どもに絵本を読み聞かせてあげるのも、コミュニケーションのひとつ。美術館をちひろの記念館にしなかったのは、絵本の素晴らしさそのものを幅広く伝える場にしたかったから。絵本は書き手のもっとも純な部分が表現された、優しさと美しさに満ちた素晴らしいものなんですよ」

 ちひろ美術館には、子どもと一緒に絵本を読むスペースも設けられています。イベントごとに世界各国の絵本画家の作品が展示され、今年の秋には、『あかいふうせん』の原画公開も控えています。(※ちひろさんが絵本化を熱望した、原作の映画『赤い風船』は7月に公開)。

 松本さんに、今後の夢を伺いました。

 「ちひろのことだけに関わらず、自分の思いを文章にして、人に伝えていけたら嬉しい。美術館にしがみついて、それを生き甲斐にしてはいけないと思っています。最前列から退いて、これからはサポートするのが私の役目。子どもたちも手を離れた今、やりたいことをやれない理由はひとつもないんです。今まで忙しくてなかなかできなかったことも、たくさんやっていきたいな」    

 

PROFILE

松本 由理子さん 
1952年生まれ。東京芸術大学音楽学部楽理科卒。いさきちひろの没後、ちひろの長男・松本猛と共に、ちひろ美術館建設に取り組む。三女一男の母。近年は講演や執筆活動を通し、ちひろとちひろが絵に託した思いを語り続ける。ちひろ美術館・東京副館長。(財)いわさきちひろ記念事業団事務局長。著書・編著に『ちひろ美術館ものがたり』『ちひろの世界』『いわさきちひろ・若き日の日記「草穂」』(講談社)など、他多数。

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