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人生の達人

90歳の現役ピアニスト・室井 摩耶子さん 2012.02.03
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ピアノを弾き続け、いつの間にか90歳。

楽譜から聴こえてくる作曲家の声に魅了されて…
 

 「ピアノって本当に面白いんですよ。同じ楽譜で同じ曲を弾いているのに、弾き方によってまったく違う曲に聴こえるし、弾くたび新たな発見があるの」

 

 そう言うと、室井さんはいそいそとピアノの前に座った。誰もが一度は聴いたことのある美しい三連符…ベートーヴェン『月光』が流れ出す。


 「この曲は簡単だから、楽譜通り弾くだけなら誰でも弾けます。けれど、ベートーヴェンがこの曲に込めた想いは、そう単純なものじゃない。作曲家は楽譜を通して何かを伝えようとしているの。それを探し出すのが演奏家の役目。これが一朝一夕にはいかなくてね、つねに楽譜と睨めっこですよ。ねっ、面白いでしょう?」

 

 90歳の現役ピアニストは少女のように瞳を輝かせた。


 6歳からピアノを始め、24歳でプロデビュー。35歳でモーツァルト『生誕200年記念祭』日本代表に選ばれ、ウィーンへ。初めて外国の地を踏む。その後20年に渡り海外13ヶ国で演奏を重ね、世界で活躍する日本人ピアニストの先駆けとなる。異性からの求愛を「私の恋人はベートーヴェン」とかわし、身も心もピアノに捧げて生きてきた。


 帰国後も精力的に演奏会を行う。その円熟した演奏は聴衆に深い感動を与え、人々は音楽と一体化する心地良さに酔いしれた。音楽をより身近に感じてもらうため、74歳からはトークを交えたコンサート活動も始めた。


 そんな室井さんが、「私、怒っているのよ」と前のめりになる。

 「日本の音楽教育は基本的なルールを教えてくれなかったの。私は『音楽文法』と呼んでいますが、楽譜は音楽記号を駆使して、人間の感情を表しているんです。音楽文法を理解することで初めて音に血が通い、ピアノは言葉を話し始めるの。文法がないと話は成立しないでしょ。それほど大切なことなのに、知ったのは20年ぐらい前、つい最近なんです。私、今90歳よ! 聴いてない言葉がまだたくさんあるのに、時間が足りない…」


 脱帽である。ピアノと共に80余年。その情熱は衰えるどころか、ますます勢いを増していく。室井さんはモーツァルト『アダージョ』を奏で始めた。


 「穴があくほど楽譜を見つめて、考えて、弾いて弾いて弾いて、ようやく作曲家の言いたいことがわかってくるんです。その音色が出せたとき、モーツァルトがニコニコ笑っているのが見えるの。それが本当に嬉しくって!」。

 

 一日四時間、演奏会前は八時間。頭と指を酷使する練習を、一日も欠かさず続けてきた。楽譜の中に「新たな言葉を見つけた」、その一瞬の歓びが、そこに辿り着くまでの長い苦しみを上回る。

 

 取材の後半、室井さんはピアノの前からすっかり離れなくなってしまった。
 
PROFILE
室井 摩耶子さん(むろい・まやこ)
1921年生まれ。日本を代表するピアニスト。'56年からヨーロッパに活動の場を広げ、世界13ヶ国で演奏を重ねる。ドイツで出版の『世界150人のピアニスト』に選ばれた。60歳で帰国。
 


▲ 90歳とは思えない若々しさ! パソコンもお手のもので、

ブログにて近況を綴っている。


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