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編集部だより

山歩き/第4話 「仲睦まじい夫婦は手をつなぐ」 2008.03.23
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第3話のつづき

 もうここまで来て戻ることもできない。進むしかない。駅があると信じて。人も車も登山者もいない道を。静かな道を進むうち、道の両側に廃屋が現れはじめた。崩れかけた家、物置き、のびるがままの雑草、ドアもタイヤもない軽トラック、荒れ果てた地…。かつては誰かが住んでいたはずの朽ち果てた集落。人々はどこへ行った? こうなるとどこもかしこも無気味である。誰がいても恐いし、いなくても恐い。この道はいったいどこへつながるのだろう。いけば分かるさ、ありがとう!などと悠長なことは言っていられない。ぜんぜんありがたくないのである。行った先にあるのはデスかもしれないのだ。

 近くでイヌの鳴く声が聞こえる。野犬? と不安を募らせながら声の場所にいくと、どうやら飼い犬のようだ。安心だと思った矢先、私は気づいた。その家には人が住んでいる気配がない。そして、その犬は足が3本しかない。冷静な時なら違ったのかも知れないが、この状況でその光景はもはやホラーである。ヤタガラスのいとこである。ケルベロスさんの近所に住む恐ろしい「何か」の奥さんのお兄さんが勤める会社の部長である。沈み行く太陽、迫りくる闇。こんな風にして何人が、誰も知らない世界へと迷いこんでしまったのか…。まさかこれが…。

 その時、カーブの先に街灯が見えた。

 「助かった!!」

 町がある。人がいる。踏み切りがある。子どもがいる。太陽がやがて沈んだ。

 駅にはたくさんの登山者がいて、帰りの電車を待っている。山歩きとしてはたいしたことはなかったのに、ほとんど生還した気分だった。

 山を軽く見てはいけない。軽くみていなくとも、覚悟ができていなくてはいけない。地図を無視してはいけない。当然の準備ができていなかったことを猛省したい。こうしてアナザーワールドのギリギリを通り抜けて、我らの山歩きの休日は終わった。地図の通りに行くなら、お寺の裏から侵入するようだったが、時間にして半分以下で駅に着いていたようだ。最後にこれだけは言っておくが、山を歩くのは本当に素晴らしい。山にはおよそ人が生きていく全てがあるように思う。そのうちのほんの少しを我々はもらった。 いい勉強になった。


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