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編集部だより

「黒いアゲハが空に舞った」 (編集部便り) 2008.06.14
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前回の続き

 最初にそれを見つけたのは妻だった。大きな声で私を呼ぶ。私は何よりもその声に怯える。そして事態を把握した時、最初に思ったのが「ゴメンヨ~」だった。何に対してかというと、羽化した蝶の、その美しさにである。サナギをみつけてからずっと蛾だと思っていた。(蛾が美しくないという意味ではありませんよ。)なので、その蝶の黒く美しい姿には思わず心が震えた。さっそくデジタルカメラを持ち、蝶の前に陣取る。まだ羽化したての彼は、モジモジしながら羽を乾かしていた。湿度のすくない晴天の日、この瞬間をどうやって知ったのか不思議であるが、何しろ生きていたことが驚きだった。二人は買い物は後回しにして、蝶の観察を始めた。(このへんがファーブルである)

 良い天気。湿度もない爽やか日。すぐに天高く舞い上がるだろう。

 よくよく観察すると、次第に彼は小さくなっていくのが分かる。お腹の部分などは、何度もピッとオシッコなのか、不要なものを噴出しているので目に見えて縮んでいく。羽も最初はフニャっとしていたのが、どんどん乾き、パリっとした封をあけたばかりの海苔のようになっていく。

 「早く飛ばないかな」

 「もう少し身体を軽くしないとね」

 「もうどれくらい経つ?」

 「2時間くらい」

 「…………」

 これだけ天候に恵まれた中、彼はいっこうに飛び立つ気配がない。相変わらず揺れているだけだ。結果的には朝の10時くらいから観察を開始し、飛んだのは午後2時を回っていた。暇か?近所の人や、事情を知らない通行人はどう思っただろう。壁に向かって並んで体育座りしている夫婦ふたり。カワイソウな雰囲気をプンプン醸し出している。

 私はついにしびれをきらし掃除を始めた。水をくみに行き、戻って来た時。…彼は飛び立った。またしても肝心なところを見逃してしまった。しかし、彼は無事に中空へと舞い、何か私たちにお礼する素振りはみせず、名残りを惜しむこともなく消えていった。もちろん恩返しもない。大事な場面を見るこができないのはきっと体質なのだ。しかし、今回は生命の力強さ、不思議を体験させてもらった。また、今秋に彼の子孫がかえってくることを切に願う。


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