アクティブなシニアライフを応援する情報サイト
TVでも人気のスーパードクター 順天堂大学医学部教授 小林弘幸先生の健康講座
- メメント・モリ 2024.04.19
-
前回、ビギナーでいることの大切さを説明しましたが、なにか新しいことに取り組みましたか。三日坊主に終わった人もいるかもしれませんが、それでも構いません。挑戦することに意味があるので、また新しいことを探してください。ただ、なかには重い腰が上がらなかった人もいるでしょう。
「メメント・モリ」というラテン語を知っていますか。「自分がいつか必ず死ぬことを忘れるな」という意味があります。私は60歳を過ぎた頃、自分に残された時間は多くないと感じました。それからは「一日一日が勝負だ」と思い、全力で生きています。常に死へ向かって進んでいるのですから、ダラダラしている暇はありません。
先日、義父が亡くなり、葬儀でお坊さんがこんな話をしました。
「人生は毎日が修行です。修行から解放されるのだから、死ぬのもそんなに悪くありません」
医師としてたくさんの方の最期に立ち会ってきましたが、亡くなる方は確かに「いい顔」をされています。究極のノーストレス状態というか、人生という修行から解き放たれたような、すがすがしい表情なのです。
しかし、多くの人にとって死は恐ろしいものです。「死ぬのは苦しいですか?」「怖くないですか?」という質問を何度となく受けましたが、残念ですがその答えは私には分かりません。
多くの日本人は「死=終着点(ゴール)」と捉えているため、こうした疑問が浮かぶのだと思います。宗教によっては「死んだら天国に行ける」「生まれ変わる」など、死は通過点だと説いています。そう信じることで恐怖を抱かず、死を迎えられるのだと思います。
私は死後の世界や生まれ変わりを信じていませんが、死をゴールと考えない生き方には賛同します。新しいことに挑戦しながら、ワクワクしながら前のめりでその時を迎える──それが幸せな人生の終わり方だと思うのです。