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TVでも人気のスーパードクター 順天堂大学医学部教授 小林弘幸先生の健康講座
- 疾患の9割に関係する「活性酸素」 2025.10.04
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「人はなぜ老い、加齢と共に病気になりやすくなるのか?」
この問いに対し、医学はいまだ結論に至っていません。医師として回答を試みるなら「体の細胞がサビついてきたせいだ」と述べます。
人は約37兆個の細胞の集合体です。細胞がサビついていくほどエネルギーを生む効率が低下したり、各臓器の働きが落ちるほか、体の至る場所で炎症が起きます。その結果、活力が衰えていくのだと思います。
細胞をサビさせる原因が、強力な酸化力を持つ「活性酸素」です。鉄がサビて劣化するのと同じような現象を体内で起こすため、体をむしばむ毒性の強い物質と考えてください。活性酸素は「がん」「動脈硬化」「心筋梗塞」「脳卒中」「糖尿病」「アルツハイマー型認知症」など、全疾患の約90%に関係していると言われています。
年を取ると活性酸素が増える理由ですが、それは「SOD(スーパーオキシドディムスターゼ)」という抗酸化酵素が関係しています。若い頃はSODが活性酸素を毎秒約10億個のペースで無毒化していると言われますが、40歳を過ぎたあたりからSODが老朽化していきます。警備役を失い、野放しになった活性酸素は「ヒドロキシラジカル」に変化。これも活性酸素の一種ですが、ひとつの細胞に巣食っただけで50%の確率で細胞を破壊するとされるほどの強い毒性を持っています。
また、活性酸素は細胞膜の脂質を酸化させて「過酸化脂質」を作り出します。食用油を繰り返し使うとドロドロになるのと同様です。過酸化脂質は近くにある脂質まで酸化させ、それが雪だるま式に増殖。さらに増えた過酸化脂質が活性酸素を生みつづけます。過酸化脂質は脳や血管、肝臓、腎臓、副腎に蓄積しやすく、炎症などのトラブルを引き起こし、臓器にダメージを与えるとされます。次回は活性酸素の対策を説明します。