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芸能人インタビュー

仲代 達矢/人間は愛しいし、おもしろい。そんな人間を演じる役者が今心から楽しいと思えるのです。 2009.07.23
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鋭い眼光と低く響き渡る声。「身体が動かなくなったら引退です」と笑うようにつぶやく。日本の演劇界、映画界、テレビで今なお観るものに強烈な印象を与え続ける名優・仲代達矢さん。
76歳となった今年、能登演劇堂で念願の「マクベス」に挑む!!

 
不器用でも死ぬまで継続できる。それがプロなのです

 



 世田谷の閑静な住宅街にひっそりと佇む瀟洒な洋館があります。仲代達矢さんが役者の修行の場として始めた私塾「無名塾」。仲代さんが日本一と自負する稽古場で、名優は静かに自身の役者人生を語り始めました。


 「六十年も役者をやっておりますが、随分不器用な生き方をしてきたと思います。芝居を始めてすぐに、映画で素晴らしい監督たちとご一緒する幸運に恵まれましたが、私は舞台の仕事が入ると他の仕事を一切受けませんでした。同時に何人もの人間を演じることができないんです。私が不器用なせいもありますが、それでもこの作品は仲代でいくとなると、映画会社も監督も待ってくれたんです。とても緩やかな作り方でしたし、それくらい役者が尊重された時代です。


 無名塾にも若い俳優の卵がおりますが、『台本を二本抱えるような役者にはなるな』と言っております。自分でも不当なことを言っているなと感じます。それでも私は思うんです。素材として存在する役者だからこそ、自分と作品を大事にし、どんな役柄でもこの役を演じられるのはこの人しかいないと思われる役者になって欲しいと。そうあることで役者の『道』が続くのだと思います。その道を死ぬまで継続していくことができる。それが私の定義するプロの役者です。中には食えなくて、目がおどおどしている役者もいますが、それは可哀想なことです。好きな道を選んで、多少食うのには不満足ではあっても、この世界に生きると決めた者には食うために生きるのか、生きるために食うのかという二つの道しかないのです。こんなことを言えるのも、六十年間も試行錯誤しながらやってきた爺ですから(笑)」
 
役者として終わろうとする今、私は大事なものを手に入れたのです
 
 そして演技を極め続けて現在76歳。自らの死を意識するようになり、仲代さんは自由を手に入れたと言います。


 「観客が見るべき姿は役者の過去でも将来でもなく、現在だけなのです。私の場合はもう先が短いですし(笑)。だからこそ、私には今日だけなんです。今日のこの公演が最後になるかも知れない。今はいつもそう思いながら、舞台の袖から飛び込みます。明日の公演のことは考えてはいません。昔と違うのはそこですね。若い頃の私には、仕事に恵まれていた割に、この役を上手く演じないと次が無いという不安に常に怯えていました。上に登ることと人よりも上手くやろうという思いが、いつの間にか自身を身動き取れない窮屈な状態にしていたのでしょう。過酷で、不自由で、押さえ付けられて。一番窮屈でしたね。それが死に近づいたことで、やっと自由になれたようです」

 円熟の極みとも言える境地にたどり着き、仲代さんが見つけたのは、自由だけではありません。それが人間への深い『思い』でした。


 「この年になって、人間が好きだと素直に思えるようになりました。ライバルへのむき出しのような感情も消え、まわり全ての人間を善悪を超えて好きになりました。すると人間ってこんなにも面白いのだと気づかされたんです。面白いし、良いし、滑稽だし、愚かだし、悲しい。それでもやはり愛おしいんです。もし若い頃に人間はいいものだ、愛おしいものだと気づいていたら、もっと高い所にまで行けたかとも思います。役者としてそろそろ終ろうとする今ですが、そういう面白い人間を演じる役者になれたことを心から良かったと思います」
 
本物の馬が駆け、森がざわめく。壮大なスケールで描く「マクベス」

 


 


 磨き抜かれた役者としての肉体と精神。長年月をかけて手にした役者道。そのすべてをぶつける作品が、この9月、石川県七尾市の能登演劇堂で幕をあけます。仲代さんと恭子夫人が監修した演劇専門ホールは、舞台奥の壁が開き、背後の自然を舞台の一部としてとして取り込むことができます。そこで上演されるのがシェイクスピの傑作悲劇『マクベス』。魔女の予言により愛する妻とともに国王の座を狙うマクベスの悲しい運命を描きます。


 「『マクベス』で描かれるのは、犯した罪に対して人間はどう向き合っていくのかということなのです。年を重ねた分、27年前に演じた頃とは違ったマクベスを演じられると思います。悪というイメージが強いですが、実は普遍的な男なんです。魔女から「王になる」と言われ、その思いがくすぶりながら、次第にどんどん大きくなって…。最後は破滅するのですが、普遍的な男がちょっとしたことで変わっていく様を通して、人間の持っている心の弱さをお見せできればと思います。


 それと今回は能登演劇堂での限定公演ですが、舞台のバックが観音開きになっていて、森が借景となります。そこに八頭の馬を走らせます。マクベス登場にも本物の馬を使います。さすがに客席までは入れませんが(笑)。森が動くというシーンには地元の方々がボランティアで参加してくださいます。このような舞台は、おそらく世界的にもないと思います。能登限定ですから、簡単に観に来てくださいなんて言えませんが、近くには和倉温泉があり、牡蠣の旨い季節になります。能登の素晴らしい自然と海と美味。そしてちょっと演劇。シェイクスピアの世界を覗いてみてください。76歳にもなって、こんな冒険をするとはね(笑)」

 

プロフィール

役者・無名塾主宰/仲代 達矢

 

なかだい・たつや 1932年東京生。51年俳優座養成所入所。「オセロ」「どん底」「ドライビング・ミス・デイジー」などに出演。芸術選奨文部大臣賞、文化功労者など多数。映画では小林正樹監督、黒澤明監督作品などに出演、輝かしい功績を残す。75年、宮崎恭子夫人とともに無名塾設立。

 

公演告知

 

 

 

(C)石坂直樹

 

2009能登七尾演劇祭/第4回能登演劇堂ロングラン公演


無名塾『マクベス』
作/W.シェイクスピア  上演台本/隆 巴 演出/林清人  出演/仲代達矢、若村麻由美、山谷初男、渡辺梓 他 日程/2009年9月18日(金)〜11月15日(日)会場/能登演劇堂  料金(全席指定・税込)/A席:7,500円、B席:6,500円
※「マクベス」観劇ツアーもあります。詳しくは能登演劇堂までお問い合わせください。


 
【問】能登演劇堂 TEL::0767-66-2323

 

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