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思いやりの心が失われていく現代。今こそ本当の豊かさを見つめ直してほしい 2013.06.17
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 鋭く光る眼光、ずしりと響く低い声が放つ存在感。多くの出演作で物語のキーパーソンを演じ、見る者に強烈な印象を残してきた伊武雅刀さん。役者としての向き合い方、「思い入れが強い」と語るハリウッド映画「終戦のエンペラー」(7月27日公開)について話しを聞きました。

 

 

■少年時代の楽しみは「映画」。銀幕スターに憧れを抱く

  

「物がない時代でした。SLが落とす燃料のコークスを拾い、家で使っていましたよ」と振り返る少年期。唯一、心を踊らせたのが映画だった。生まれ育った野方(中野区)の駅前にあった劇場へ足を運び、山より巨大な『ゴジラ』に驚愕し、躍動する『笛吹童子』に憧れた。銀幕スターを夢見た少年はいつしか役者を志し、日本映画界に欠かせない存在として活躍し続けている。

 「年々、良い意味で力が抜けてきています。自分のことだけを考え、仕事に向き合っていた若い頃とは違うんでしょうね。力加減やさじ加減とかって言うけど、やっと役者加減が分かってきたのかな」

 

 

 

 

 

 

■日米英のスタッフの情熱が作り上げた歴史サスペンス大作

 今夏にはハリウッド映画「終戦のエンペラー」の公開が控えている。

 1945年、終戦の夏。コーンパイプを片手に日本上陸したマッカーサー。武器を携えない、その悠然とした姿は日本人に戦争終結を示すためだった。マッカーサーは部下フェラーズを呼び、「戦争の真の責任者を探せ」という極秘指令を与える。日本人女性アヤに思いを寄せていたフェラーズは困惑しながらも任務遂行しようとするが…。開戦直前の首相交代劇、玉音放送前夜のクーデター、アヤの行方、そして昭和天皇とマッカーサーが並ぶ写真---日本やアメリカ、イギリスのスタッフが徹底的に資料や記録を調べ、終戦後の激動の日本を舞台に歴史サスペンスを描いた。ニュージーランドに瓦礫が山積みとなった戦後の日本を再現、映画で初めて皇居撮影が許可されるなど、ハリウッドならではのスケール感も見所のひとつ。

 「初めは終戦の日本を舞台に男女の愛を描いた映画だと思っていました。プロデューサーの奈良橋陽子さんは、劇中に登場する宮内次官の関屋貞三郎さんの孫にあたる方。彼女のお祖父さんの話し、日米のスタッフが映画にかける情熱を感じ、どんどん作品に対する思い入れが強くなりました。それに日本とアメリカが手を取り、映画を作ることも感慨深いですしね。戦争から時間が経ったこと以上に、あの戦争を風化させてはいけないという願いがあります」

 終戦4年後に生まれた伊武さん。作品は自身が過ごした少年時代とも重なる。

 「戦争が終わって10年以上経っていましたが、それでもどこかに戦争の”におい“が残っていました。食べ物がなく、お芋ばかり食べていましたし、おやつは新聞紙に盛られた赤い砂糖。だから、ジープに乗った進駐軍の兵隊さんがばらまくチューイングガムに飛びついたりしてね」

 映画では連合国軍最高司令官のマッカーサーをトミー・リー・ジョーンズさんが演じる。共演する日本人キャストも西田敏行さん、中村雅俊さん、桃井かおりさんなど豪華な顔ぶれ。伊武さんは保身に走らず、信念を貫く政治家・木戸幸一を演じた。

 「大切なもの、そして国を守ろうという木戸さんの思い。現代は情報技術が発達し、国という境がなくなってきています。良い面もありますが、日本が築いた文化が失われているように感じます。そのひとつが思いやりの心。戦争は決してよくないことですが、過酷な状況でも皆が結束した心は尊いものです。この作品が私たちにとって本当の豊かさを見つめ直すきっかけになれば何よりです」

 

 

■プロフィール

俳優/伊武雅刀

いぶ・まさとう 1949年東京都出身。76年から人気ラジオ「スネークマンショー」で人気を獲得。82年「ウィークエンド・シャッフル」で映画初出演。88年にはスティーヴン・スピルバーグ監督の「太陽の帝国」に出演。以来、映画やTVドラマ、ナレーションなど、幅広い分野で活躍する。

 

■インフォメーション

終戦のエンペラー

7月27日(土)より全国ロードショー

■ 監督/ピーター・ウェーバー 

■ プロデューサー/奈良橋陽子ほか

■ 出演/マシュー・フォックス、トミー・リー・ジョーンズ、初音映莉子、西田敏行、伊武雅刀ほか


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