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いろいろあったけど幸せよ。だって元気だもの。歌いつづけることが今の夢です 2013.10.21
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戦後間もない1950年代。美空ひばりさん、江利チエミさんらと共に「三人娘」として人気を博し、現在まで活躍しつづける雪村いづみさん。今年、芸能活動60周年を迎え、波乱に満ちた半生、ひばりさんやチエミさんとの思い出、10月に発売したニューアルバムについて聞きました。

 

■借金・友との別れを乗り越え、歌いつづけた60年  

 「歌手生活60周年?16歳から歌っているから…。あら、私そんな年なの」と無邪気に笑う雪村さん。艶のある声、凛とした立ち姿は年齢を感じさせません。少女のように愛嬌を振りまく雪村さんですが、その人生は波乱に満ちたものでした。

  語学堪能で優秀だった父は通信社などに勤務。洋楽レコードを集めるだけでなく、自身も演奏するほどの音楽好き。父の影響を受けた雪村さんは母のドレスを着て歌い、音楽に囲まれて家族団らんのひとときを過ごしました。そんな幸せな家庭に悲劇が訪れます。雪村さんが9歳の時に父親が急逝。母は事業に手を出して失敗し、雪村さんは家族を支えるため高校進学を諦めて働くことを決意します。

  「メイドで雇ってとお願いしたら、幼くて可哀そうという理由で断られました。困り果て母の知人がやっていた新橋のダンスホールに立ち寄りました。そこで演奏を聴いていたら、私も歌いたいと思ったんです。英語で歌うと、皆が踊りをやめて拍手してくれた。明日から来てもいいって言われ、本当にうれしかった」

 その才能は一気に業界へ広がります。関係者の目に留まり、16歳で歌手デビュー。1955年には映画『ジャンケン娘』(東宝)で同い年の美空ひばりさん、江利チエミさんと共演し、「三人娘」として戦後の日本芸能界を牽引します。

  「私のデビュー曲『想い出のワルツ』はチエミちゃんが歌いたかった曲なの。アメリカから帰国したチエミちゃんが『どんな子が歌うの』と私を見たらスリップが出てて…。シミチョロだったから一気にライバル意識がなくなったって言ってたわ。お嬢(ひばりさん)と初めて会ったのは江東劇場だったかしら。大スターだったけど笑い上戸で緊張も吹き飛びました。もう二人はいないけど死んだって思えない。私の中では生きているの」

  一躍スターになった雪村さん。順調に回り始めた人生が、再び揺らぎます。母が医師と再婚。病院や家、アパートを建て、8500万円の借金が22歳の雪村さんの小さな肩にのしかかります。

  「母を憎んだことはありません。それをバネにしたから、歌いつづけられたんだもの」

 日本での活動に区切りをつけ、22歳で渡米。TV番組出演やアメリカ全土への巡業は、LIFE誌で「ドルが稼げる初めての日本人歌手」と報じられました。しかし華々しい活躍は束の間。スターの椅子は用意されず、アルバイトしながらオーディションを受ける日々。帰国後も寂しさを埋めるように男性との出会いと別れを繰り返しました。「いろいろあったけど幸せよ。だって今、こんなに元気だもの」と微笑みます。人知れず流した涙も、地道に重ねた苦労も一切感じさせない笑顔でした。

  10月19日には60周年記念の2枚組アルバムが発売。1枚目は今回新たに収録し、ひばりさんやチエミさんのヒット曲を含む13曲をジャズやシャンソンでアレンジ。円熟味を増した歌声が、聴く者を魅了します。2枚目は懐かしい50年代の三人娘の映画サウンドトラックを鮮やかに甦らせた作品。2枚のアルバムで、デビューから現在に至る雪村さんの足跡を振り返ることができ、活動60年の集大成的作品に仕上げました。今後も記念リサイタルを予定するなど、音楽への情熱は冷めることはありません。

  「私はやっぱり歌が好き。ステージは私が私じゃなくなる不思議な場所なの。これからもずっと歌いつづけたい。それが今の夢です」

 

■プロフィール

歌手/雪村いづみ

1937年東京都生まれ。父の影響で洋楽に親しみ、16歳で「想い出のワルツ」でデビュー。「青いカナリヤ」「オー・マイ・パパ」などがヒット。江利チエミ、美空ひばりと共に「三人娘」で歌手、映画スターとして時代を築いた。82年に芸術優秀賞、93年文部大臣賞、98年紫綬褒章などに輝く。

 

インフォメーション

平成25年度芸術祭参加作品

 『想い出のワルツ~tribute三人娘/我が心のひばり、チエミ』

<DISC1>最新録音アルバム。「青いカナリア」など雪村さん自身の楽曲のほか、美空ひばりさん(「東京キッド」ほか)や江利チエミさん(「テネシーワルツ」ほか)の楽曲をカバー。

<DISC2>三人娘のサウンドトラックセレクト集。瑞々しい歌声が鮮やかに甦る。

 

3,780円(税込・2枚組) 発売中

発売元:RATSPACK RECORDS(RPES-4857/4858)


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