ハスキーでパワフルな歌声で１９８４年、鮮烈にデビューした歌手、中村あゆみさん。昨年、50歳を迎えたのを記念し、ベスト・アルバム『A BEST～Rolling50』を発表しました。『翼の折れたエンジェル』をはじめとした名曲をセルフ・カヴァーしています。

ロックシンガーとして、再び光り輝くステージへ

　２０１６年、12月。寒さ深まる中、川崎クラブチッタは熱気に包まれていた。弾けるように上がる歓声。颯爽と現れたのは、歌手、中村あゆみさん。 　「もう一度、青春を、始めよう!!」 　マイクスタンドを軽々と振り回し、体全体で歌の世界を表現する。誰もが日常を忘れ、ステージに向かって拳を突き上げる。一体となる会場の中心にはロックスター・中村あゆみの姿がありました。 　１９８４年デビュー、一躍スターダムへ駆け上がった中村さんは、それから約30年経った今もロックシンガーとしての魅力を放ち続けています。 　「実は結婚、出産をして、10年程活動を止めていたんです。その時は良き妻、良き母が私のあるべき姿だと思っていました」 　しかし、うまくいかないこともあるのが人生。中村さんは離婚し、シングルマザーになるという決断をします。一人で娘を立派に育てる、という決意が歌手、中村あゆみを復活させました。 　〝うたえるならどこへでもいく！” 　復帰後、中村さんはうたう場を求め全国各地へ。良い意味で開き直れたというその経験は歌にも影響を与えたそう。 　「営業まわりなどもしましたが、苦労というより、お仕事をいただけることがありがたかったです。今思うと若い頃は本当に恵まれていましたね。でも自分で選んで動ける今の方が楽しい！ 度胸もついたし全てが私の糧になっています」 　一度は手放した 〝歌”。再びそれを手に入れるため、がむしゃらに走る日々が中村さんをさらに成長させました。

 生きてきた足跡を刻んだ 『A BEST～Rolling50』

　「40代も終わりに近づいて、ふと振り返った時、やり残したことがあったのです。それを叶えられたのがこの新アルバム」 　昨年、50歳を迎え、中村さんはアルバム『ABEST ～Rolling 　』を発表。『翼の折れたエンジェル』をはじめ、『Rolling Age』『BROTHER』『HERO』など、80年代～90年代の楽曲のセルフカヴァーや、新曲など全16曲を収録しました。 　「当時の音源を使ってカヴァーをしたのですが、経験を積んだ今の自分のまま当時に戻ったような感覚。できなかったこと、やりたかったこと、自分の中で心残りだったものを全てうたい直すことができました」 　他にもアコースティックギター一本でうたうなど、大胆にアレンジしたものも。中でも『ともだち』は大人になった中村さんの思いをこめ、新たに詞を書きました。 　「当時書いた詞はとても無邪気。どちらも、〝本当の友達”への思いをうたっているのですが、大人になってから分かることってありますよね。これは是非比べて聴いてみてほしいです」 　全編を通して生きてきた足跡みたいなものを出せたんじゃないかな、と嬉しそうに微笑む中村さん。激しいだけでなく、時に優しく、時にしっとりと表情を変える歌声に、中村さんの現在とこれからを予感させる一枚となりました。 　「私、50代はやりたいことも尽きて、もっと落ち着いちゃうと思ってたんです。でもそんなことはなかった。うたってみたい歌、試したい表現がどんどんできて、積み重ねてきたものが実を結ぶように自分の道が明確に見えてきたんです。娘も私の手を離れたし、これからが中村あゆみ第二章の始まり。新たな青春を皆と楽しみたいです。まず、目指すのは還暦のかっこいい女性ロックシンガー！」

■プロフィール

 歌手／中村あゆみ

なかむら・あゆみ　1966年福岡県／大阪府出身。1984年、アルバム『MIDNIGHT KIDS』でのデビュー以降、「翼の折れたエンジェル」「ONE HEART」「BROTHER」などのヒット曲を出す。一時休止後、2004年、音楽活動を本格的に再開。精力的にアルバム制作やライブ活動を行っている。

■インフォメーション

『A BEST～Rolling 50』

通常盤 3,240円（税込）
発売中　発売元：ワーナーミュージックジャパン（WPCL-12455）