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つまらない人生なんてない。 ただ、生きた それだけで 尊く偉大なのだから 2020.08.24
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デビュー以来、芥川賞をはじめ数々の賞に輝き、稀代のストーリーテラーとも謳われる宮本輝さん。そんな宮本さんの地方紙連載小説がいよいよ単行本化!  37年にも及んだ大河小説『流転の海』シリーズ完結後初となる長編小説『灯台からの響き』に込めた想いを伺いました。

 

 

過去を追い灯台を巡る物語。構想は一枚の葉書から

 「まあ『流転の海』は長い仕事でしたからね。ちょっと自分の時間が欲しくなって、書斎でぼーっとしたり片付け物をしたり。そしたら僕がまだ30代の頃にファンから頂いた葉書が出てきましてね。内容は山脈の絵地図と、南アルプス全山縦走しましたってそれだけ。小説の感想とかもない。あんまり丁寧な絵地図を描いたもんだから書くとこがなくなったんでしょう(笑)。でもそれが妙に心に残って今まで大事に取っておいたんです。その葉書をぼんやり見ているうちに、この山を灯台にしたらどうかなと。そんなところからこの小説は始まりました」
 妻の急逝から2年。共に切り盛りしていた中華そば屋を閉め、何をするともなく日々過ごしていた康平は、あるとき本の間から一枚の葉書を見つける。日付は30年前、宛先は妻。大学生活最後の夏休みに灯台巡りをしたことを知らせる短い文と、どこかの地図らしき線画…。遠い記憶を辿るうち、康平は生前妻がどこの誰とも分からない人物から葉書が届いたと話していたことを思い出す。地図が示す場所はどこなのか、差出人は何者なのか…。奇妙な葉書の謎を追い、康平の灯台を巡る旅が始まる。
 巧みなストーリー展開と鮮やかな情景描写で読者を物語世界にぐいぐい引き込む『灯台からの響き』。そこには地方紙連載小説ならではの工夫もあったそう。
 「老若男女が読むものですから、難しい言葉は使わず、健全かつ最後まで引っ張っていける物語性が大切です。明日もこれを読まないかんなっていうね。1回分が原稿用紙で2枚半。そこに何かしらの仕掛けをするわけですが、毎回やるとあざとい。これが中々難しいところです」
 
市井の人々を描き続けてきた宮本輝が伝える 人生の尊さ
 
 作家生活43年。これまで多くの作品で市井に生きる人々を見つめ、描き続けてきた宮本さん。本作に登場するのも決して特別ではない、一見どこにでもいるような人たちです。しかしそんな彼らを通して伝えたかったのは、一人ひとりの人生がいかに尊いかということなのだと宮本さんは語ります。
 「結局一人の人間が形成されていく過程には、実にたくさんの人生が絡み合っているということですね。これはどんな人間でもそうですよ。例えばそうやなあ…僕に小説というものに興味を持たせてくれた人がいたとしましょう。じゃあその人はどんな人生を送ってきたのか。どんな人に育てられ、ものを教えられたのか。そんな風に自分と関わった人間の人生を考えてみると、なんの取り柄も無いように思っている自分が、いかにたくさんの人の恩恵を被ってきたかが分かるはずです。そうすると、この自分は少しもつまらなくないんだと。ものすごく重要な人物なんだと気づくでしょう。だから、どんな人生を送ってこられた方も、偉大な人生を送ってきたんだと誇りに思わなきゃ駄目ですよ。何十年と生きてきた、それ自体がどんなに凄いことなのか。人生って捨てたもんじゃない。そんなことをこの小説から感じてもらえたら嬉しいですね」
 最後に、作家として一番脂が乗るという70代を迎えた宮本さんに、今の心境を伺うと。
 「脂は乗ったんですけどね、体にガタがきました。やっぱり歳を取ったなあ。そこは気持ちとのせめぎ合いですね。でも、今までよりもっと良い小説が書きたい、それだけは確かです。今までと大して変わらんもんなら書かん方がいいからね」

 

■プロフィール

 小説家/宮本輝

1947年兵庫県出身。広告代理店勤務を経て小説家へと転身。1977年『泥の河』で太宰治賞、翌78年『螢川』で芥川龍之介賞を受賞。その後病気療養のため休筆するが、回復後は『ドナウの旅人』『優駿』『花の降る午後』など多くの作品を発表。一昨年、37年間取り組んできた自伝的小説『流転の海』シリーズを完結させた。今年春の叙勲において旭日小綬章を受章。

 

 

■インフォメーション

 

「灯台からの響き」

9月4日(金)
全国書店にて発売

本体価格:1,900円
発行元:集英社 版型:四六

 

 

 


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