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芸能人インタビュー
- 心惹かれる脚本と巡り合い、 没頭して作品に尽くすことが 女優として何より幸せです 2021.03.16
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63年に女優としてデビューし、数々の名監督の映画に出演してきた富司純子さん。女優としての気品と風格を兼ね備えるだけでなく、美しい所作で和の風情を醸し出すことができる存在です。14年ぶりとなる主演映画『椿の庭』(4月9日公開)についてお聞きしました。
あるがままに生きる。同じ毎日を悔いなく終えたい
「日常とは同じ毎日の繰り返しでないでしょうか。無理に踏ん張らず、考え過ぎることもなく、自分らしく一日を過ごすようにしています。それで悔いなく一日を終えられればいいですね。あるがままに生きていきたい」
熟慮しながら、言葉を紡いでいく富司純子さん。富司さんが主演した映画『椿の庭』(4月9日に公開)は、自身も大切にしている自然体の暮らしのなかで、祖母と孫、娘らとの家族の絆を描いた作品です。メガホンをとったのは、写真家で映画初監督作品となる上田義彦さん。自身が脚本も手がけ、構想に15年の歳月を費やしましたが、「富司さんに断られたら撮影はやめよう」と上田さんは考えていたそうです。
「国立劇場で上田さんと挨拶した際、今回の映画のお話をいただきました。突然のことでしたので驚きましたが、とりあえず初稿を拝見しました。文字を追ううち、映画のシーンが次々と映像として頭に浮かんできました。こんなことは初めての経験でしたし、監督の情熱を感じ、お受けさせていただきました」役を作りこまず、自然体でいることを心がけた最新作
舞台は美しい庭に囲まれ、海が見える古い日本家屋。祖母である絹子は夫の四十九日を終えたばかりで、娘の忘れ形見である孫の渚と一緒に暮らしていました。東京で暮らす、もうひとりの娘の陶子は、年老いた絹子と渚を心配し、自分のもとに呼び寄せようと誘います。しかし、なぜか首を縦に振ろうとはしない絹子。しかし、家の相続という難題に直面して…。季節が移り変わり、次第に家族それぞれが心に秘めた思いが明らかになっていきます。
フィルムで撮影された本作。自然の摂理に従うように、庭では鮮やかに咲く花だけでなく、枯れていく姿まで収めています。古い家屋では昔の記憶を大切にしながらも、母そして祖母として将来を案じる絹子の姿を捉えます。演じた富司さんは何を心がけたのでしょうか。
「実は絹子さんを、特別に演じようとは考えていませんでした。一切作りこまず、自然体でいることを心がけていました。監督も場の雰囲気を大切にされていたので、本当に楽しく撮影することができました」
娘役の陶子には鈴木京香さん、孫役の渚にはシム・ウンギョンさんを配役しました。実力派女優との共演により、まるで本当の家族であるかのような空気感がスクリーンに漂います。
「鈴木さんは本当の娘のように思えましたし、シムさんは日本語を懸命に理解しようとする姿が印象的でした。ふたりとは世代は違いますが、互いに人間として尊重し合い、撮影に臨めたと思います。
完成した作品を観ましたが、日本的な趣きが感じられる素晴らしい仕上がりでした。女優としてもこんなにも素敵に撮影していただき、女優冥利に尽きる映画になりました。
この年になっても女優として求められることは、本当にありがたいことです。いつまでも背筋を伸ばし、着物を美しく着られるように凛としていたい。これからも心惹かれる脚本と巡り合い、没頭して作品に尽くすことができれば女優として何より幸せですね」■プロフィール
女優/富司純子
1945年和歌山県生まれ。高校2年のときにマキノ雅弘監督にスカウトされ、63年に女優デビュー。68年公開の『緋牡丹博徒』で初主演を務め、以降東映のスター女優として活躍。89年『あ・うん』で映画復帰と共に富司純子に改名し、数々の作品に出演。07年に紫綬褒章、16年に旭日小綬章を受章。
写真/烏頭尾拓磨、着付け/与儀みどり(与儀美容室)、ヘアメイク/倉田正樹(アンフルラージュ)■インフォメーション
「椿の庭」シネスイッチ銀座、ムービル他で4月9日より全国順次公開監督・脚本・撮影:上田義彦出演:富司純子 シム・ウンギョン
田辺誠一 清水綋治チャン・チェン 鈴木京香