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芸能人インタビュー
- 次世代に繋ぎたい母と息子の命の物語。ハンカチを持って劇場にお越しください 2021.06.21
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大規模オーディションで映画の主役に抜擢されデビューした富田靖子さん。楚々とした佇まいと愛くるしい笑顔は当時のままに、今では映画やドラマに欠かせない女優として活躍されています。そんな富田さんに7月再演の舞台『母と暮せば』について伺いました。
井上ひさしさんの遺志を継ぐ『母と暮せば』が待望の再演
「稽古中はとんでもない行動をしているとよく人に言われます(笑)。例えば、一口食べたおにぎりを置いてどっか行っちゃったり、着替えてる途中で出てきてしまったり……。だいたい台詞のことを考えてると思うんですが、そうすると他の事がシャットダウンされてしま
うみたいで、記憶もない(笑)。ただ、そんな
私でも子どもが泣けば現実に戻るし、お腹空いたと言われればご飯を作るし、『勉強しなさい!』なんて言っ
ている自分がいる。
そうやって無理にでもリラックスさせてくれる存在が居るから、なんとか追い込まれずに済んでいるのかなって」
黒目がちの瞳を輝かせ、昔と変わらぬ可憐な笑顔を見せる富田さんですが、役へのアプローチは現実に戻れなくなるほどストイック。だからこそ、自分を繋ぎとめてくれる家族の存在はかけがえのないものだと仰います。そんな富田さんが慈愛・絶望・怒りが相克する母親役を演じた舞台『母と暮せば』が3年ぶりの再演を迎えます。
昭和23年・長崎。原爆投下から3年、母・伸子は大学に行ったまま行方不明となっている息子・浩二の帰りを半ば諦めつつも祈り続けていた。ある日伸子は小さな部屋の中にある誰かの気配に気づく。『だれか、おると?』と尋ねるとそこには行方不明だった浩二の姿が。『母さん、ずうっと笑ってなかったとやろ? 母さんが笑うと僕も幸せになるとよ』。驚きながらも喜び涙し、幸せなひと時を過ごす二人だったが、話題は原爆が落とされた日へと移っていき――。
『ナガサキの物語を書きたい』と願いながらこの世を去った劇作家・井上ひさしさんの想いを受け継ぎ制作された『母と暮せば』。母が繰り返し訴えかける長崎の惨状や、息子の口から語られる被爆の瞬間は生々しさを持って観客へと迫り、2018年の初演時には多くの人の心を震わせました。再演のオファーは前回公演の真っただ中。その場で出演を快諾したものの、今になって重圧を感じ始めたそうで……。
「再演のお話を頂いたときは、作品がとても良かったと褒められたような気がして『ウンウン!』なんて言ってはいたものの……。わが子を原爆で奪われるという言葉にできないほどの喪失感をもう一回体験するのかと今頃になってヒシヒシと重さを感じています。ただ、あのとき勢い余って台本に書いた訳のわからないメモ書きも、今見ると意味が分かっていたり、ちょっと違う角度から見ている自分が居るのは面白いなとも思っていて。前回は演出家のリクエストにどう応えるかだけで精いっぱいでしたが、今回はもうちょっと先まで見ることができるかもしれません。それが正解なのか、求められているのかは分かりませんが、二度と繰り返してはならない悲劇として次の世代へ繋いでいけるよう一生懸命やりたいです」母であることを愛おしく思える、哀しくも温かい親子の物語
「『母と暮せば』は、大切な人を奪われてしまう戦争の悲惨さを伝えると同時に、息子が『お母さんが大切だよ、大好きだよ』って言い続けることで母に生きる力を吹き込むお話でもあります。なので、お子さん、特に息子さんを持つお母様には是非見ていただきたいですね。きっと、母である自分の存在がとっても大切なものなんだと再確認していただけると思います。どうぞハンカチを持って劇場にお越しください。もしかしたら1枚だけでは足りないかもしれませんよ(笑)」
ヘアメイク/国府田圭 スタイリスト/吉田由紀(crêpe) ワンピース:Arobe イヤーカフ:ROOM
■プロフィール
女優者/富田 靖子
1969年福岡県出身。1983年、映画『アイコ十六歳』のオーディションで12万7千人の中からヒロインに選ばれデビュー。同作で日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞し注目を集める。近年では『あさが来た(NHK)』『私の家政夫ナギサさん(TBS)』『35歳の少女(NTV)』など話題作に次々と出演。2018年の『母と暮せば』は7年ぶりの舞台出演となった。
■インフォメーション
こまつ座 第137回公演「母と暮せば」
原案/井上ひさし
作/畑澤聖悟
演出/栗山民也協力・監修/山田洋次
出演/富田靖子、松下洸平
会場/紀伊國屋ホール日程/7月3日(土)~14日(水)
料金(全席指定・税込)/6,600円
【問】こまつ座 03-3862-5941http://www.komatsuza.co.jp/