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芸能人インタビュー

面白いと信じてやってきた俳優の仕事。若いスタッフと仕事できることが今の喜び 2023.05.16
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強面のアウトローから柔和な父まで演じ分ける俳優・光石研さん。近年はファッションやライフスタイルも注目されています。6月9日公開の『逃げきれた夢』は12年ぶりとなる主演映画です。「噛めば噛むほど面白みが出てくる」と話す注目作、仕事へのこだわりをお聞きしました。

役が光石さんそのもの!?  俳優仲間や実の父親まで登場

 映画やドラマに欠かせない俳優・光石研さん。バイプレーヤーとして活躍する原点は、子ども時代にまでさかのぼります。
 「王・長嶋じゃなくて、ショートの土井正三さんが憧れ。友達がジャイアンツを応援したら近鉄ファンになったり、脇道を歩いたり、レコードもB面が好きでしたね。結局、俳優になっても変わりませんでした(笑)」
 若干16歳で映画の主役に抜擢され、上京後に本格的に芸能活動を開始しますが30代にはオファーが激減。その当時に岩井俊二監督や故・青山真治監督からのオファーが転機となり、今では幅広い役を務め、バイプレーヤーの醍醐味を見せています。
 「役作り? 周りのスタッフが準備をし、『思いっきり悪人やってください』と僕をその気にさせてくれる。僕らの仕事はスタッフの皆さんのおかげ。僕はオファーに応えたい一心で演じるだけです」
 謙虚な光石さんですが、映画『逃げきれた夢』(6月9日公開)では実に12年ぶりに主演を務めます。「市井の人にスポットライトが当たっただけ」と話すものの、今回の役には戸惑いを覚えました。
 「いただいた役が僕そのものでしたから。シーンにも僕自身の思い出が散りばめられていますし、故郷の北九州でロケを行いました。自分を演じるのは、はずかしいような、くすぐったいものですね」
 北九州の定時制高校の教頭、末永周平(光石研さん)。元教え子の南(吉本実憂さん)が働く店で昼食をとるが、支払いを済ませず店を立ち去る。周平は記憶が薄れていく病を患っていた。病を機にこれまでの人生を見つめ直し、ろくに顔を合わすこともなかった妻や娘、友人、生徒と交流を図るがいつも空回り…。
 人生の転機を迎えた、中年男性が踏み出す一歩を可笑しくも切なく描いた本作。監督と脚本を務めた二ノ宮隆太郎さんは、脚本を光石さんで当て書きしただけでなく、光石さんを取材。リアリティを求め、同じ九州出身の女優や光石さんの同志とも言える松重豊さん、さらに父親役には光石さんの実父をキャスティングしました。
 「松重さんは本当にやりやすい役者で心強かった。松重さんが僕をどう思っているか分からないですが(笑)。今も松重さんら同郷の人とは故郷の言葉で話していたので、セリフも問題ありませんでした。
 それに父親の目の前で演技するなんて…。18歳で家を出た本心を話すシーンもありましたが、今までそんなことを話したことないですから。はずかしいから、撮影以降は父と話してはいません(笑)」
 疎かにした人間関係を取り戻すため、家族や生徒らに懸命に話しかける周平。「いつもと違う周平」「いつも通りの周囲」のやりとりから、昭和世代の男性の本音や悲哀のような言葉が聞こえてきます。
 「『ただ金を入れとっただけの人間やったのに、ご苦労様っち言えとか。求めたらいけんよな』『本当、人間期待したらいけんって、なんにでも』。そんな口にしても仕方ないのに、言葉にしてしまうシーンが印象に残っています。
 僕自身も60歳を過ぎ、周平と同じように、いろいろ思うこともありました。セリフ覚えが悪くなる不安もあるし、若い頃と体調も違う。人生がひと回りしたことを感じています。
 16歳で俳優の仕事に出会い、これが面白いと信じてずっとやってきました。仕事がない時もありましたけど、振り返れば性に合っていたと思っています。この年だと肩や腰が重い日がほとんど。でも、若いスタッフと仕事できる楽しさや喜びの方がそれを上回るんです」

 

 

■プロフィール

俳優/光石 研

1961年、福岡県生まれ。78年に映画『博多っ子純情』のオーディションを受け主役に抜擢。さまざまな役柄を演じ、映画ドラマで欠かせない存在に。近年の主な出演作は『由宇子の天秤』(21)、『バイプレーヤーズ~もしも100人の名脇役が映画を作ったら~』(21)、『波紋』(23)など。16年には第37回ヨコハマ映画祭助演男優賞(映画『お盆の弟』『恋人たち』)に輝く。

 

■インフォメーション

『逃げきれた夢』
6月9日㈮より新宿武蔵野館他で全国公開

■出演:光石研/吉本実憂、工藤遥、杏花、岡本麗、光石禎弘/坂井真紀 松重豊 他
■監督・脚本:二ノ宮隆太郎

 

 


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