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芸能人インタビュー
- 考えさせられたり、笑えるのが映画の魅力。劇場で映画を楽しめる時代に平和を感じます 2025.07.22
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周囲を明るくさせるようなチャーミングな笑顔が魅力の南果歩さん。52歳のとき患った乳がんを乗り越え、映画やテレビ、舞台、文筆業、ボランティアなどで活躍しています。思い出深いと語る映画のその後を描いた『長崎―閃光の影で―』(8月1日公開)に出演します。
戦後80年。映画を通し、当時の出来事、苦悩を知ることの意義
数々の映画に出演してきた南さんが「今も自分の中に残っている」と話すのが『TOMORROW 明日』(88年公開)です。原爆が投下される前日の長崎の人々の暮らしを描いた映画で、デビュー間もない南さんは「ただ必死にやりました」と振り返ります。
「原爆が落とされる前日に祝言を挙げる看護師ヤエの役でした。長崎で撮影したので爆心地や平和公園に訪れ、実際に救護にあたった方のお宅で話を伺いました。お暇しようと思った頃、精悍な顔立ちの若い男性の写真を持って来られました。それが戦争で亡くなった許婚だったとお聞きし、私にも戦争が迫ってきたような感覚を覚えましたし、辛い思い出を見せてくださったことに胸が震えました。8月9日が来ると、今も長崎の町と人々、当時の撮影を思い出します」
『TOMORROW 明日』の公開から37年。同作を自費で手掛けた鍋島壽夫さんが「原爆投下“後”の物語」を作るために立ち上がります。それが『長崎―閃光の影で―』です。
1945年8月。看護学校に通うスミとアツ子、ミサヲの3人の少女。戦争が激化し、故郷・長崎へと戻ります。家族や友人らと楽しいひとときを過ごすなか、8月9日に新型爆弾が投下。一瞬にして焼け野原になるものの無事だった3人は救護所で看護に奔走。しかし、ある男性は水を欲しながら、ある女性は生まれたばかりの赤ん坊を抱えながら「原爆」により死んでいく。尽力しても被爆者を助けられない現実に少女らは直面し…。
鍋島さんの呼びかけに応じたのが被爆三世の監督・松本准平さん、語りには10歳のときに長崎の自宅で被爆した美輪明宏さん、長崎出身の福山雅治さんが平和への願い、生命の逞しさを綴った楽曲『クスノキ』を看護師役の3人のためにプロデュース・ディレクション。原案となった手記の作者のひとりで唯一の存命者の山下フジヱさんが出演し、命の尊さ、生きていく意味を問いかけます。
「戦争を真正面から捉え、勇気をもって描いた作品です。鍋島さんからもう一度長崎の映画に出てほしいとお話をいただき、ぜひ参加したいと思いました。悲しい歴史を題材にすることは、演じる側も作る側にも思いがあります。私自身も戦争世代ではないので分からないことばかり。ですが、こういう映画を観て、戦時下で青春時代を過ごした方の苦悩、どれほど悲しいことが起きたのか、残された方がその後の人生を歩んだかを知ることは、とても意義があると思います」
終戦から80年目の今年。当時を伝える語り部が減り、戦争の記憶が少しずつ遠のいています。南さんは震災の被災地で読み聞かせを行っていますが、被災地へ行くこと、被災者と交流を重ねる重要性を実感しています。
「離れた場所にいると震災を記憶の片隅に追いやりがちですが、実際に話を伺うとニュースで伝えていることと全く違う現実を知ります。復興まではまだまだ時間がかかる、その途上を生きていると感じることも少なくありません。
世界のどこかで今日も争いが起きています。日本は80年戦争がありませんでしたが、長崎や広島に残された戦争遺構を訪れたら戦争の記憶を肌で感じられます。
コロナ禍で映画館や劇場に足を運べない時期に、平和や日常の意味を改めて考えた人も多いと思います。映画は疑似体験をしたり、ときには考えさせられたり笑ったり、さまざまな作品があるのがいいところ。映画を楽しめる日常は、平和を象徴していると思います」●ヘアメイク/黒田啓蔵(Iris) スタイリスト/坂本久仁子
■プロフィール
俳優/南 果歩
1964年1月20日生まれ、兵庫県出身。84年『伽椰子のために』のヒロイン役に抜擢され俳優デビュー。近年の主な映画出演作に『君の忘れ方』『ら・かんぱねら』(共に25年)、公開待機作として『ルールオブリビング(原題:Rules of Living)』、主演舞台『ハハキのアミュレット』可児市文化創造センター(9月29日~10月5日)、吉祥寺シアター(10月9~15日)などが控えている。
■インフォメーション
『長崎―閃光の影で―』
8月1日㈮全国公開
■監督/松本准平
■出演/ 菊池日菜子/小野花梨、川床明日香/ 南果歩 他
■原案/「閃光の影で―原爆被爆者救護 赤十字看護婦の手記―」(日本赤十字社長崎県支部)