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気になるキノコ 2023.07.18
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 気になるキノコがある。小ぶりだが、味と香りはマツタケと同格かそれ以上とも言われるバカマツタケである。東京大と公益財団法人「かずさDNA研究所」(千葉県)のチームが今年5月下旬、マツタケのゲノム(全遺伝情報)の解読に成功、人工栽培への道も期待されているが、バカマツタケは人工栽培でも先行しており、馬鹿にできない存在となっている。
 それにしてもバカマツタケとは…酷い名前を付けられたものである。小ぶり以外はマツタケと遜色ないのに、発生時期がマツタケより早く、キンモクセイが咲く8月下旬頃からであることが災いし、「寝ぼけて出てきた馬鹿なヤツ」という意味でバカが付いたらしい。
 マツタケは菌根菌類と呼ばれ、生きた植物と共生するキノコ。アカマツなどの根元に生え、菌糸を伸ばしてアカマツなどと養分を分け合って共に成長する。それだけに人工的な栽培が難しいとされてきた。バカマツタケも菌根菌類だが、コナラなどの広葉樹林の腐葉土が発生場所で、マツタケとは生態が異なる。
 このバカマツタケの特性に着目し、人工栽培に乗り出したのが肥料メーカー・多木化学(兵庫県加古川市)。2018年に完全人工栽培に成功した。植物と共生させないため培養期間が短く、室内環境の調整で季節を問わず生産が可能となった。現在は生産設備の着工時期を見定めている段階という。
 バカマツタケの栽培が軌道に乗り、販路が拡大すれば主役が代わり、マツタケがバカマツタケに似たキノコと言われるのかもしれない。ちなみに千葉県産「房州マツタケ」は、バカマツタケだそうだ。(石井仁・読売新聞東京本社元記者)


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