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一期一筆
- 人生の軌道 2024.05.20
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地球の北半球に位置する日本は、毎年6月21日頃の夏至まで刻一刻と日が長くなり、その後は12月21日頃まで徐々に短くなる。これは23・4度傾いた状態の地球が、巨大惑星にもかかわらず、小さな分、秒単位の〝宇宙リズム〟に従って毎日1回自転し、一年に1回の周期で太陽の周りを公転しているためである。
毎日の緻密なリズムの積み重ねによってなされている地球のぶれることのない運行。人の人生に重ねるならば、世の中は小さな行いの積み重ねがあって成り立っており、焦らず、弛まず、ぶれず、着実に地球の如く〈我が軌道〉を歩めということになるだろう。
ただ、人生は常に選択の連続であり、思い通りに歩めない現実も多々ある。英ケンブリッジ大学のバーバラ・サハキアン教授の研究では、人は一日に最大3万5千回もの選択をしているという。選択にも大小あるが、正解、不正解が判然としないのが、就職や結婚といった人生の大きな岐路となる選択である。
「この道でよかったのだろうか」などと難事に遭遇し、早くも思い悩んでいる新社会人の人たちに贈りたい戒めの言葉がある。〈最も恐るべき敵は自身の揺れ動く心〉。ヘレン・ケラーの言葉だが、揺れ動く心を制するのは、図太い図々しさだと思う。
日本人は、周囲を気にして自分を殺した生き方を選択する傾向にあるが、人生をたくましく切り拓いているのは、図太く図々しい人が多い。次代を担う人たちには、軌道をぶれずに運行する地球のように、思い定めた当初の〈我が軌道〉を図太く、着実に歩み続けてほしいと思う。(石井仁・読売新聞東京本社元記者)