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夏が来れば冷奴 2024.06.17
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 俳句には四季折々に定められた季語がある。その季語を四つの季節それぞれに持つのが豆腐。春は田楽という呼称で、夏は冷奴、秋は新豆腐、寒い冬は湯豆腐と凍み豆腐といった具合である。私たちの食生活を長年支えてきたことが、俳句の季語からも見えてくる。
 言うまでもなく豆腐の原料は大豆。〝畑の肉〟と言われるように、大豆には含量が多い良質な植物性タンパク質や炭水化物、ビタミン、ミネラル、脂質の5大栄養素のほか、体内では生成されない必須アミノ酸の9種類がすべて含まれていることでも知られている。
 ただ大豆から豆腐を作り出したのは中国で、遊牧民のチーズ作りが原型。日本への伝来は平安時代の後半と言われており、庶民の食卓をしっかり支えるようになったのは、江戸時代に石臼が普及してからという。
 安価なうえ栄養豊富で美味しい豆腐。副産物である雪花菜(おから)や油揚、湯葉、ガンモドキも人々に好まれた。禄を得る前の江戸中期の儒学者・荻生徂徠が、滋養たっぷりの雪花菜で食をつなぎ、出世後に世話になった豆腐屋に恩返しをした実話も、講談や落語で語りつがれ、好評を博した。
 美味しいわりに淡泊な豆腐は、さまざまな調理も可能だが、夏が来れば冷奴、冬は湯豆腐が我が食卓の長年の定番。シンプルに豆腐そのものを味わっている。冷し素麺と笹かまぼこをトッピングしたサラダ、そして冷奴。猛暑が予想される今夏も、そんな昼食が多くなりそうである。
 余談だが、毎月12日と10月2日は〈豆腐の日〉である。日本豆腐協会が1993年に定めた。単なる語呂合わせだという。(石井仁・読売新聞東京本社元記者)


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