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一期一筆
- 和式便器の壁 2025.05.19
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学校の和式便器は苦手?ピッカピッカの1年生らが入学直後にまず遭遇するのが〝和式便器の壁〟だという。かかとをつけてしゃがめなかったり、使い慣れていないためトイレに行くのを我慢したり…。災害時には避難生活で苛酷な対応も求められる時代。バランスが取れるしゃがみ方などを我が子に伝授できるのは保護者。その責任は重い。
洋式68・3%、和式31・7%。これは文部科学省が2023年9月に発表した全国公立小中学校の調査結果である。それにNPO法人日本トイレ研究所が22年に全国の小学生計1000人を対象に実施した調査では、和式便器を「抵抗なく使用できる」という回答は22・4%だけ。「使用できない」が、ほぼ4人に1人に該当する26・7%だった。
また、「抵抗はあるが使用できる」は50・9%にのぼったものの、児童の多くが和式便器に抵抗感を持っていることがわかった。児童の家庭や商業施設はほとんどが洋式。それも暖房便座や温水洗浄便座、照明・洗浄の自動化も進んでいる。ただ洋式便器の学校でも、このような高機能式は少なく、今後の課題でもある。
余談だが、和式便器は筋力が弱った高齢者にも難儀な存在になっているようだ。評論家の樋口恵子さんが自著『老いの福袋』(中央公論新社)で、しゃがんで用を足し、立ち上がろうとしたが、立ち上がれない。外出先での悪戦苦闘ぶりを2件も告白していた。
〈スクワットしゃがんだまま立てません〉。シルバー川柳を思い出した。つかまり立ちできる取っ手があるだけでも助かる。和式便器を高齢者の外出を阻む壁にしてはならない。(石井仁・読売新聞東京本社元記者)