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一期一筆
- 生命ファースト社会を 2025.08.25
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米国のトランプ大統領は強引な「アメリカファースト」政策で、国内の分断と対立だけでなく世界をも混乱させている。我が国の今回の参院選では、排外主義を煽り、徴兵制や核武装を推奨し、批判する人たちを非国民とののしるような勢力が、一定の支持を得た。
世界各国では近年、政治情勢が一変し、自国の利益を最優先とする政治勢力が台頭、国内外で〈対立と分断〉が深まってきた。戦後80年。第2次世界大戦後に築き上げてきた国際的な連帯と協調から脱する動きも加速傾向にある。
あたかも戦前へ逆行するかのように、国家間の対立が先鋭化し、経済摩擦なども深刻化してきた。〈対立と分断からは何も生まれない〉。大量殺戮を繰り返し、〝戦争の世紀〟と言われた20世紀から人類は何を学んだのだろうか。
それに今夏の参院選で気になったことがある。ロシア製ボットが、親露派大手アカウントが流す石破政権批判や閣僚の偽情報などをSNS空間でトレンド入りさせて百万再生単位でバズらせ、排外主義を煽る投稿を激増させたという指摘である。その結果が日本人ファーストを掲げた排外勢力に支持が集まったというのだ。
由々しき事態である。このボットは、米国では摘発されているが、日本では野放し状態にあるという。確かに、日本人社会は選挙のたびに分断と対立の溝を深めてきたように感じる。
日本を含め世界が目指すべきは、対立や分断を越えて誰もが安心できる平和と共生社会の構築だろう。もっと深い次元で言うなら、人間ファーストの社会であり、さらに生命ファーストの社会である。(石井仁・読売新聞東京本社元記者)