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森永卓郎さんのちょっと賢い年金生活
- 【第55回】メガ大家のリスク 2016.11.22
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老後の生活資金を確保するための不動産投資が注目を集めています。マイナス金利政策の影響で、ほとんどの金融商品の利回りがゼロになるなかで、不動産投資だけが、少なくとも3~4%の利回りを確保し続けているからです。不動産投資といっても、いまは値上がり益を狙うのではなく、ワンルームマンションやアパートを購入して、賃貸収入を得るというのが、老後生活を支える基本戦略です。ただ、この不動産投資の問題点は、部屋が空室になると、収入がなくなってしまうことです。それどころか、ローンの支払いや経費は発生し続けますから、赤字になってしまうこともあります。
そうした事態を防ぐための方法の一つは、賃貸する部屋を数多く抱えることです。そうすれば、全部屋から入居者がいなくなることはないので、収入が安定するのです。そのため、最近ではサラリーマンから不動産投資を始めて、数百室の貸家を持つ、「メガ大家」と呼ばれる人も増えてきました。なぜ、そんなことができるのかと言うと、いまが低金利で、なおかつ都心部を中心に物件価格が上昇し続けているからです。最初に買った小さなアパートが値上がりすると、担保余力ができます。金利も低いので、銀行から余分にお金を借りられるようになるのです。そして、その担保余力を使って別のアパートを買います。するとさらに不動産価格が上昇して、新しいアパートにも担保余力が生まれます。こうして、まるで「わらしべ長者」のように、賃貸物件を次々に増やしていけるのです。
ただ、メガ大家にもリスクがあります。それは不動産価格が下落した時です。価格下落で担保不足になると、銀行は借金の返済を求めてきます。そこで物件を安値で処分し、結局無一文ということにもなりかねません。やはり借金に頼りすぎた投資をするのは危険で、物件価格の3割程度は自己資金を入れるような身の丈に合った投資が、必要でしょう。■ PROFILE
森永卓郎 1957年東京生まれ。経済アナリスト。東京大学経済学部卒業後、日本専売公社(現JT)、経済企画庁、民間シンクタンクなどを経て、獨協大学経済学部教授に。多数の著書を手掛け、「年金は60歳からもらえ」(光文社)を監修。ペットボトルの蓋などB級グッズコレクターでもある。コレクションを展示する博物館(B宝館)を新所沢に2014年10月に開館!